第134回日本森林学会 公開シンポジウム

森と生きる~智頭林業の取り組みから~

令和5 年3 月25 日(土)とりぎん文化会館小ホール

森林・自然環境技術教育研究センター(JAFEE)による森林分野CPD (4 時間)認定プログラム
主催:一般社団法人 日本森林学会 共催:公益社団法人 国土緑化推進機構
後援:鳥取大学、公立鳥取環境大学、鳥取県
公益社団法人 国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」助成事業

こちらで当日の録画をご視聴いただけます

プログラム

司会:芳賀大地(鳥取大学農学部)
13:00 開会挨拶(日本森林学会会⾧、東京大学大学院農学生命科学研究科:丹下健)
13:05 趣旨説明(大会委員⾧、鳥取大学乾燥地研究センター:山中典和)
13:10 祝辞(鳥取県農林水産部 森林・林業振興局⾧:池内富久)
13:15~14:10
   (基調講演)文化庁選定:重要文化的景観「智頭の林業景観」~日本初の林業景観選定の意義~
     中越信和:広島大学名誉教授
14:10~14:20 休憩
14:20~14:55
   智頭林業を支えた自然と人々の暮らし
     山本福壽:智頭の山人塾塾⾧
14:55~15:30
   智頭林業の新たな展開~智頭ノ森ノ学ビ舎の取り組み~
     國岡将平:智頭ノ森ノ学ビ舎
15:30~15:40 休憩

休憩までに講演に対する質問をお受けします。
会場の皆さんは受付でお渡しした質問票に書き込んでください。
オンライン参加の皆さんはZoom ウエビナーのQ & A をご利用ください。

15:40~16:30
   パネルデイスカッション「智頭から地域の森林管理を考える」
     コーデイネーター:芳賀大地
     パネラー:山本福壽、中越信和、國岡将平、村田周祐(鳥取大学地域学部)
16:30 閉会の挨拶 芳賀大地


演者紹介と講演概要

基調講演
文化庁選定:重要文化的景観「智頭の林業景観」~日本初の林業景観選定の意義~

中越信和
広島大学名誉教授(理学博士)

1951 年、広島県生まれ。専門は生態学、景観生態学、環
境計画学。都市緑地・文化的景観・自然保護区についての
景観研究。
智頭の重要文化的景観選定に関わる。
智頭町文化的景観保存活用委員会・委員⾧


講演概要

日本における文化的景観の存在を確認していただきます。文化庁が文化財としている文化的景観の内容を知ってください。そのうち景観法で規定される文化庁所管の「重要文化的景観」について解説させていただきます。重要文化的景観は2006 年の最初の選定から、2021 年10 月現在で総数71 物件あります。重要文化的景観選定基準には8 つあり、その3 番目が森林景観です。文化的景観は生業が基盤です。日本では必然的に農地の評価が高く、特に主食である稲を生産する水田が第一義的に評価されています。しかし、国土の主要景観である森林の41%が人工林なのも事実です。人工林は木材生産を目的としていますから林業景観は明らかに文化的景観です。全71 物件のうち、基準3 を構成する林業景観の物件は「智頭の林業景観」ただ一つです。この物件が重要文化的景観に選定されたのは2018 年です。日本のひな型となる選定ですから、その林業景観の内容が充実していなければなりません。智頭町ではこの要件を満たしている林業景観が存在しています。同町が林業景観の重要性に気付き、文化庁選定にいたるまでの努力をご紹介させてください。
 今後、智頭町を含む全国の中山間地域での林業景観を維持するために必要な要件を本集会に参加されている皆様と議論できれば幸いです。より広義には、自称森林国とされる日本における森林の生態系サービスについて、林業からの貢献について皆様が実行に向けて努力されることを大いに期待しているところです。

講演1 智頭林業を支えた自然と人々の暮らし

山本福壽
智頭の山人塾塾長、元鳥取大学農学部教授(農学博士)

1951 年、岐阜県関ケ原町の今須林業の地に出生。
専門は造林学、樹木生理学。形成層活動の生理についての研究。現在は智頭の山人塾塾⾧として活動。智頭の林業景観整備検討委員会委員。


講演概要

智頭林業は江戸時代の始めの慶⾧スギの植林を端緒に、厳しい藩政期の植林政策、先覚者の指導と育苗技術の発達が支えた明治期の造林、そして戦後の拡大造林期を経て、今日を迎えています。この地の林業の特徴は、豪雪地の芦津奥に広がるスギ天然林の存在です。天然林で伏条更新した若木から採取された枝の挿し木は、赤挿し苗として智頭林業の勃興に大きく貢献しました。
 この講演では、スギを主役とする林業発達の歴史を中心に智頭林業を解説します。

講演2 智頭林業の新たな展開~智頭ノ森ノ学ビ舎の取り組み~

國岡将平
智頭ノ森ノ学ビ舎

1986 年、鳥取県智頭町生まれ。
合同会社MANABIYA 代表社員、智頭町地域林政アドバイザー
2015 年の智頭ノ森ノ学ビ舎立ち上げから事務局として活動。林業以外のまちづくり活動にも関わりながら「智頭の山と暮らしの未来ビジョン(2020 年3 月)」の策定に携わる。


講演概要

林業の課題は林業だけでは解決できません。VUCA 時代とも呼ばれる変化が激しく将来の予測が困難な時代において、これからの人と森林との関りをどのように考えていけば良いでしょうか。
 鳥取県智頭町で2015 年に発足した智頭ノ森ノ学ビ舎の活動事例を紹介しつつ、現場レベル・コミュニティレベル・自治体レベルでの課題やチャレンジを紹介しつつ、2020年3月に策定した「智頭の山と暮らしの未来ビジョン」についても触れていきます。

パネルディスカッション

智頭から地域の森林管理を考える

コーディネーター:芳賀大地
パネラー:中越信和、山本福壽、國岡将平、村田周祐(鳥取大学地域学部)

芳賀大地

鳥取大学農学部助教、博士(農学)
1986年沖縄県生まれ。東京都育ち。
 専門は森林政策学、林業経済学。森林政策の効果や森林所有者の動向を研究。智頭林業を筆頭に、様々な個性を持つ鳥取各地の林業を研究することで、多様で持続可能な森林管理の実現を目指しています。

村田周祐

鳥取大学地域学部教授、博士(学術)
1977年広島生まれ育ち。
 専門は村落社会学(生活論)。文献や統計よりは、実際に出向いて住民たちと生活や活動を共にし、その地域のありようやこれからを考える社会学をしています。

★村田からシンポジウムへの一言

林業の課題は林業だけでは解決できません。VUCA 時代とも呼ばれる変化が激しく将来の予測が困難な時代において、これからの人と森林との関りをどのように考えていけば良いでしょうか。
 鳥取県智頭町で2015 年に発足した智頭ノ森ノ学ビ舎の活動事例を紹介しつつ、現場レベル・コミュニティレベル・自治体レベルでの課題やチャレンジを紹介しつつ、2020年3月に策定した「智頭の山と暮らしの未来ビジョン」についても触れていきます。