No.45 甲賀の前挽鋸製造および流通に関する資料群
こうかのまえびきのこせいぞうおよびりゅうつうにかんするしりょうぐん
番号 | No.45 |
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登録年度 | 2020年度 |
認定対象 | 道具・用具(総数1274点)、文書資料(総数418点) |
分類・形式 | 技術体系、道具類、資料群 |
成立年代 | 江戸中期~昭和30年代 |
所在地 | 甲賀市甲南ふれあいの館 |
所有・管理者 | 甲賀市 |
前挽鋸は、縦挽鋸の一種であり、機械化以前の中心的な製材道具である。導入された初期の大鋸(おが)は二人挽きであったが、それを一人で挽けるように開発されたものが前挽鋸であり、製材工程の効率化に貢献した。縦挽鋸の導入は構造材の利用樹種を変え、それ以前はスギやヒノキ、クリに限られていたものが、アカマツやケヤキなどの利用を可能にし、農家などの民家建築が大きく発展したことが指摘されている。
滋賀県甲賀地域においては、18世紀半ばに前挽鋸製造技術が移転され、播州三木と並ぶ生産地として、20世紀前半まで隆盛を誇った。明治期には洋鋼の導入により鋸生産量を増やした。その販路は帝国全土に及び、例えば北海道開拓記念館所蔵の前挽鋸のうち、約半数は甲賀産であった。甲賀市甲南ふれあいの館には甲賀前挽鋸生産の草分けの一つである八里平右衛門家の工場所蔵の前挽鋸や製造道具一式を中心に、流通に関わる文書等が保存されている。これらは重要有形民俗文化財として指定されているが、森林資源利用や建築文化に画期をもたらしたと思われる前挽鋸の技術や流通の様相を示すものとして、林業遺産として相応しいと判断された。