第130回日本森林学会大会/公募セッション一覧

公募セッションは、既存の部門ではカバーできない部門横断的なテーマについて会員の研究交流を継続的に進めることを目的としたセッションです。発表者は公募します。

T1 森林へのシカの影響とその管理
Mechanism of deer impact on forest and its management

コーディネータ:  飯島勇人(森林総合研究所)、明石信廣(北海道立総合研究機構林業試験場)、安藤正規(岐阜大学)、
田村淳(神奈川県自然環境保全センター)、藤木大介(兵庫県立大学)
ポスター発表の設置有り

全国各地におけるシカの増加に伴う森林への様々な影響が報告されている。シカによる森林への影響の強弱をもたらす要因や、影響の管理について様々な研究が行われている。これまでに、シカの生態や個体数推定、シカによる森林への影響の把握方法、植生指標におけるシカとその他の要因の分離といった生態的研究だけでなく、これらの知見を実際に適用した管理事例など、様々な研究発表が行われてきた。その結果、様々な研究知見が積み上がる一方で、シカによる森林への影響の顕在化の過程が地域間で異なることが明らかになってきた。その要因として、シカ密度の時系列動態や植生、無機的環境条件などの違いが考えられる。しかし、これらの知見はシカによる影響が顕在化している地域で行われていることが多く、一度シカ密度が増加した後に減少した地域や、近年までシカがほぼ分布していなかった地域における研究が不足している。 また、森林におけるシカの影響を管理する上で、天然林と人工林で重視することは大きく異なる。天然林では嗜好性の高い種の消失や土砂流出防止と言った生態系機能の保全に重きが置かれる一方、人工林では植栽木に対する被害減少に重きがおかれる。特に人工林では、成熟した人工林の収穫後の再造林が急増する一方、森林経営計画を策定している森林において鳥獣害防止森林区域が設定されるようになり、森林管理の中にシカ管理を組み込む重要性が増している。森林の種類や地域間差を考慮したシカによる影響の顕在化の過程の解明、影響を低減させるための技術開発、開発された技術を適切に運用する管理体制の確立が求められている。 本セッションは、5回目の開催となる。今年も、シカ問題に関心をもつ多様な分野の研究者の参加による活発な議論を行いたい。

T2 準平衡状態へと分布が移行する中での森林の放射性セシウム研究
Studies on forest radiocesium of which distribution is in transition to “quasi-equilibrium” state

コーディネータ: 小松雅史(森林総合研究所)、大久保達弘(宇都宮大学)
ポスター発表の設置有り

このセッションが行われる2019年3月には、福島第一原発事故からすでに8年が経過したことになり、すでに10年という節目も見えつつある。チェルノブイリ原発事故後のレポートでは、森林内の放射性セシウムの分布状態について、事故から4-5年までは大きく変化する初期段階と定義され、その後は準平衡段階または安定段階とよばれる、分布変化が小さい状態に移行するとされている。実際に福島原発事故に行われてきた研究からも、森林内の放射性セシウム分布の変化は緩やかになってきている。事故後の初期段階は「森林のセシウムがどうなっているのか?」を示すために、まずはサンプル・データを集めて分布状態を明らかにすることに主眼が置かれていたが、今後は安定した環境下における分布状態を材料として、「森林のセシウムはどうなっていくのか?またどうしたらいいのか?」ということにも注目していく必要がある。

 一方で、時間の経過とともに事故による影響の認識が風化され、原発事故による被災者支援の打ち切りへの不安が高まるなど、被災地・被災者の社会的な立場はより厳しい状況になりつつある。本公募セッションは今年で7回目となる。森林内の放射性セシウムの挙動を理解しその対策についての議論を深めるため、今年も公募セッションを企画することとした。今年も幅広い分野・視点からの参加をお願いしたい。

T3 熱帯林研究
Tropical Forestry Research

コーディネータ: FUJIWARA Takahiro 藤原敬大(Kyushu University/九州大学)、TERAUCHI Daisuke 寺内大左(Toyo University/東洋大学)、OTA Masahiko 大田真彦(Kyushu Institute of Technology/九州工業大学)、ONDA Nariaki 御田成顕(Kyushu University/九州大学)

This session is designed to share knowledge, information, and experiences on tropical forestry research. To address issues and achieve better conservation and utilization of tropical forests, it is essential to have the following: (1) knowledge on interdisciplinary approaches, (2) dialogue based on accurate information, and (3) learning from past experiences of trial and error. We invite presentations from various research fields such as ecology (e.g. biodiversity, carbon stock), silviculture, socioeconomics (e.g. farm economy, community forestry), anthropology (e.g. local livelihood, culture), politics (e.g. national and international policy), and information science (e.g. remote sensing, GIS). We also welcome presentations by international students as well as young Japanese researchers. To carry out discussion among participants from different countries, English is official language for all presentations and following question and answer in this session. To facilitate lively discussion in this session, the speakers are encouraged to make your presentations understandable for the participants with different background and mother languages.

T4 樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots


コーディネータ: 平野恭弘(名古屋大学)、野口享太郎(森林総合研究所)、大橋瑞江(兵庫県立大学)
ポスター発表の設置有り

『樹木根の成長と機能』の公募セッションでは、樹木根をキーワードに太い根から細い根まで、生態系レベルから細胞レベルまで、根と関連した多岐にわたる研究を公募し、報告対象といたします。本公募セッションでは、樹木根だけでなく、様々な境界領域分野との融合を目指します。ご自身の研究内容に「根」に関する測定や「根」に関連する事象があれば、葉や材質特性など樹木地上部に関する研究、土壌微生物、土壌化学性、土壌緊縛力など土壌に関する研究、温暖化や酸性化といった環境変動に関する研究など、根以外を主な対象とする発表も広く歓迎いたします。また、今後「根」を測定項目としたい会員向けに測定方法の共有も目的とします。発表形式は口頭発表またはポスター発表とします。

 発表当日は、趣旨説明の後、口頭発表していただき、適宜発表間に討論時間を設け、最後に総合討論の時間を設ける予定です。趣旨説明では根研究学会の開催する根研究集会の紹介など樹木根の国際および国内動向を森林学会員に広く情報提供し、総合討論では、樹木根と境界領域分野との研究者間ネットワーク作りを促進するための討論も行いたいと思います。

T5 森林環境の持つ保健休養機能の基礎的研究と応用研究
Basic and applied studies on forest amenities

コーディネータ:  上原巌(東京農業大学)
ポスター発表の設置有り

本セッションは第130回大会で15回目を迎え、森林科学研究の分野の中で、一般市民の需要と関心が高い分野の1つである。これまでの大会では、生理的および心理的なアプローチの基礎的研究をはじめ、臨床事例、研究手法、尺度開発、国内外の地域における事例研究などが発表されてきた。基礎的研究から、保健休養に供する森林環境の整備といったハードの課題、治療・保養プログラム作成等のソフトの課題、そして各臨床症例・事例研究や、保養地事例などに至るまで多岐にわたった内容になっていることが特徴である。そのため、森林・林業関係者だけでなく、医療、社会福祉、心理、教育など、多領域の専門家に参加していただきながらコラボレーションを行ってきたことが本セッションの特色であり、存続意義である。森林環境は、一般市民の日常的な健康増進はもとより、日常の各職場における保健衛生や、医療、福祉、教育などの社会における諸分野での可能性が大きい。本大会のセッションでは、そのような諸分野における視点から心身の保健休養に供する森林、樹木の利用、活用手法などの調査研究だけでなく、特に事例研究にも重点を置き、森林の持つ保健休養機能についての研究手法、アプローチ方法についても検討、考究することを目的とする。