第134回日本森林学会大会 発表検索

講演詳細

S2. 環境変化にともなう樹林地生産性に関わる被食防衛[Forest productivity affected by plant defense capacity under changing environments]

日付 2023年3月26日
開始時刻 13:00
会場名 Room 4
講演番号 S2-4
発表題目 ハウチワカエデ紅葉期のアントシアニンの挙動と役割
Behavior and functional role of anthocyanins during autumn coloring in fullmoon maple
要旨本文 紅葉期のアントシアニンの役割を明らかにするため,ハウチワカエデ成木樹冠内の生育光環境が異なる葉を対象として,光合成色素,窒素含量,糖・デンプン含量,光合成特性の季節変化を調べた。樹冠表層南向き(強光),樹冠表層北向き(中間の光強度),樹冠内部北向き(弱光)の3か所に生育する葉を選び測定を行った。乾重当たりの窒素含量は光環境によらず,すべての葉で同じタイミングで同程度の低下を示した。光阻害の指標となるFv/Fmの低下についても光環境による違いは見られず,すべての葉で窒素を回収した後に光阻害が認められた。また,糖:(糖+デンプン)比もすべての葉で等しく秋季の上昇傾向を示し,窒素の回収が本格化するタイミングでデンプンはほぼ消失していた。樹冠表層の葉ではデンプンが消失した後にアントシアニン濃度が急上昇すること,アントシアニン濃度の上昇に対して糖濃度が頭打ちになることから,アントシアニンがデンプンの代替として糖濃度の上昇を抑制している可能性が示唆された。糖濃度の上昇は葉の老化を促進することが知られている。アントシアニンは糖濃度を制御することで,樹冠表層の葉の早期落葉防止に貢献していると考えられる。
著者氏名 ○北尾光俊1 ・ 矢崎健一1 ・ 飛田博順2 ・ 岸本純子3 ・ 高林厚史3 ・ 田中亮一3
著者所属 1国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所北海道支所 ・ 2国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所植物生態研究領域 ・ 3北海道大学低温科学研究所
キーワード アントシアニン, 糖, デンプン, 光阻害, 老化
Key word anthocyanin, sugar, starch, photoinhibition, senescence