第134回日本森林学会大会 発表検索

講演詳細

S2. 環境変化にともなう樹林地生産性に関わる被食防衛[Forest productivity affected by plant defense capacity under changing environments]

日付 2023年3月26日
開始時刻 13:00
会場名 Room 4
講演番号 S2-8
発表題目 大気汚染環境におけるBVOCの役割と虫害要因の変化
Biological functions of BVOCs and herbivorous behaviors of insects in air-polluted environments
要旨本文 高濃度のオゾン(O3)など、環境ストレスに伴う植物の防御物質量の低下は、植食性昆虫から見た餌資源としての魅力を向上させると想定される。しかし、近年の研究から、昆虫の行動は植物に辿り着く前の段階において、植物から放出される“香り”に大きく影響されることが分かってきた。この重要なシグナルである“香り”、非メタン系揮発性炭化水素のBVOCs(Biogenic Volatile Organic Compounds)は、放出後に大気中でO3と反応することで本来の機能を失うことが懸念されている。昆虫のBVOCsに対する誘引性は、1つの物質よりも、複数の成分のブレンド比によって効果を発揮する場合が多い。よって、O3と反応性の高い一部の重要な成分の減衰によって、その“香り”が昆虫に対しては認識されなくなってしまう。花粉媒介昆虫はもちろんのこと、植食性昆虫も生態系の流動を生み出す重要な構成種である。O3など大気環境の悪化は、BVOCsが紡いできた生物間コミュニケーションを崩壊させる懸念を孕んでいる。本講演では、開放系O3曝露システムを用いて行ってきた研究事例を中心に、大気汚染が及ぼす昆虫-植物間コミュニケーションへの影響とそのリスクに関して概説する。
著者氏名 ○増井昇
著者所属 静岡県立大学食品栄養科学部
キーワード オゾン, 虫害, 植物生理, 生物起源揮発性有機化合物, 脂肪酸
Key word ozone, insect damage, plant physiology, biogenic volatile organic compounds, Fatty acids