公募セッションは、既存の部門ではカバーできない部門横断的なテーマについて会員の研究交流を継続的に進めることを目的としたセッションです。本大会ではT1からT5までの5つのセッションがあります。発表者は公募します。

  • T1 . 生物多様性保全と森林管理
    Biodiversity conservation and forest management
  • T2.森林環境の持つ保健休養機能の基礎的研究と応用研究−森林+αの可能性ー
    Basic and applied studies and possibilities on forest amenities
  • T3.森林の放射能研究
    Research on radioactivity in contaminated forest
  • T4.フォレストデジタルツインの可能性を探る: ポテンシャルと課題
    Exploring the potential and remaining technical issues of forest digital twin
  • T5.樹木根の成長と機能
    Development and function of tree roots

T1.生物多様性保全と森林管理
Biodiversity conservation and forest management

コーディネータ:山中聡,山浦悠一(森林総合研究所)

日時・会場:3月8日 14:15-17:30・432講義室

趣旨

森林の減少・劣化は世界規模で進行しており,森林生態系の生物多様性保全とその持続可能な利用のための行動が必要とされています。日本の国土の約7割は森林に覆われていますが,人間活動による改変が少ない森林は限られており,原生林やそれらに依存する生物の生息地を維持することは重要です。また近年では,里山などで人間活動の衰退に伴う生物多様性の減少も懸念されています。その一方で,日本の森林の4割を占める人工林は各地で伐採が進み,林業の地域社会や経済への貢献が期待されています。これらの人工林は一般に生物多様性が低いことが知られていますが,管理の仕方によって多くの生物の生息地として機能するとも指摘されています。森林と林業の社会的価値や持続可能性を向上させていくために,日本でも生物多様性の保全に配慮した森林管理が,今後より重要となっていくと考えられます。
 生物多様性の保全に配慮した森林管理を行うには,様々な分類群や林相(天然林や人工林など),地域を対象とした生態学的研究の蓄積と保全技術の開発や検証が必要です。また,得られた知見を実際の森林管理に導入するためには,政策学や社会経済学など,様々な学問分野からのアプローチが必要とされます。
 本セッションでは,森林生態系における生物多様性の保全という共通の課題を扱う研究の発表を募ることで,これまで異なるセッションで発表されてきた研究や研究者が集まる場を作りたいと考えています。研究対象とする生物多様性の階層(遺伝子,種,生態系)や空間スケール(林分,景観,流域など),学問分野は問いません。発表形式は口頭発表とポスター発表の両方を対象とします。
 当セッションは昨年に引き続き今回3回目の開催です。今後も継続することで,参加者の方々が取り組んでいる課題について情報を交換・議論し,理解を深め,生物多様性に配慮した森林管理の実践に寄与できる場を作りたいと考えています。

T2.森林環境の持つ保健休養機能の基礎的研究と応用研究 −森林+αの可能性ー
Basic and applied studies and possibilities on forest amenities

コーディネータ:上原巌(東京農業大学)

日時・会場:3月8日 14:15-15:30・441講義室

趣旨

本セッションは本大会で18回目を迎え、森林科学研究の分野の中で、一般市民の需要と関心が高い分野の1つである。
 これまでの大会では、生理的および心理的なアプローチの基礎的研究をはじめ、臨床事例、研究手法、尺度開発、国内外の地域における事例研究などが発表されてきた。基礎的研究から、保健休養に供する森林環境の整備といったハードの課題、治療・保養プログラム作成等のソフトの課題、そして各臨床症例・事例研究や、保養地事例などに至るまで多岐にわたった内容になっていることが特徴である。そのため、森林・林業関係者だけでなく、医療、社会福祉、心理、教育など、多領域の専門家に参加していただきながらコラボレーションを行ってきたことも特色であり、本セッションの存続意義である。
 今回の第135回大会ではさらに、「森林+αの可能性」をサブテーマに掲げ、一般市民の健康増進はもとより、日常生活における保健衛生や、医療、福祉、教育などの諸分野とも複合したセッションを目指す。 身近な事象から国際的な課題まで、多種多様な研究発表をお待ちしています。

T3.森林の放射能研究
Research on radioactivity in contaminated forest

コーディネータ:小松雅史(森林総合研究所),大久保達弘(宇都宮大学)

日時・会場:3月8日 14:15-16:15・343講義室

趣旨

この原稿を書いている2023年の夏に政府は福島第一原子力発電所敷地内に貯蔵されたALPS処理水の海洋放出を計画しています。こうした政策を進めるためには関係者への説明・理解が重要であるとともに、放射線や放射性物質の挙動についてしっかりしたエビデンスを示すことが求められています。またウクライナでの核リスクの高まりは続いており、備えとしてのデータ蓄積の重要性は高まっています。いまだ続く森林の放射能汚染の課題解決の糸口となるよう、今回も森林の放射能研究についてのセッションを行います。このセッションでは口頭発表とポスター発表どちらの発表形式も可能とする予定です。4年ぶりに対面での学会が再開されますので幅広い分野から皆様の発表をお待ちしております。
 なお今回大会中に森林の放射線影響に関する企画シンポジウムが開催される予定です。森林の放射性物質の挙動に関する研究発表が主であった本セッションではフォローしきれなかった課題について貴重な発表が行われます。是非両セッションにご参加いただき森林の放射能研究の現状について理解を深めていただければと思います。

T4.フォレストデジタルツインの可能性を探る: ポテンシャルと課題
Exploring the potential and remaining technical issues of forest digital twin

コーディネータ:橋本昌司,南光一樹,瀧誠志郎,中澤昌彦,陣川雅樹(森林総合研究所)

日時・会場:3月8日 17:00-18:30・431講義室

趣旨

都市部を中心にデジタルツインの整備が急速に進み、都市防災シミュレーションやゲーム開発への活用が進められている。デジタルツインとは現実世界(リアル空間)で収集した情報を元に仮想空間上にリアル空間を再現する技術を指す。都市部のデジタルツインは都市情報のあり方や活用法を劇的に変えつつある。森林版のデジタルツインであるフォレストデジタルツインは、従来の森林情報のあり方を大きく変革し、資源把握、木材生産、防災、多様性、リクリエーション、教育など様々な森林生態系サービスに活用できる可能性を秘める革新的技術である。一方、都市部と比べると、広域で、複雑な地形の上に生物で構成されている自然生態系である森林は、デジタルツインの構築のためには森林特有の工夫と克服すべき課題もあると考えられる。本セッションは、まず初回として日本版フォレストデジタルツインの可能性と課題について情報交換と議論を行うとともに、次回以降は社会実装を目指した具体的な事例を紹介しながら議論を展開する予定である。今回は口頭発表のみとし、ポスター発表の募集は行わない。

T5.樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots

コーディネータ:平野恭弘(名古屋大学),大橋瑞江(兵庫県立大学),野口享太郎(森林総合研究所),牧田直樹(信州大学),福澤加里部(北海道大学),檀浦正子(京都大学)

日時・会場:3月8日 14:15-17:30・341講義室

趣旨

公募セッション「樹木根の成長と機能」では、樹木根をキーワードに太い根から細い根まで、生態系レベルから細胞レベルまで、根と関連した多岐にわたる研究を公募し、報告対象といたします。本公募セッションでは、樹木根だけでなく、様々な境界領域分野との融合を目指します。研究内容に「根」に関する測定や事象があれば、葉や幹をはじめとする樹木地上部に関する研究、土壌微生物や土壌物理化学特性、緊縛力など土壌に関する研究、温暖化や酸性化といった環境変動に関する研究など、根以外を主な対象とする発表も広く歓迎いたします。また「根」を測定項目としたい会員向けに測定方法の共有も目的とします。発表形式は口頭発表またはポスター発表とします。発表当日は、趣旨説明の後、口頭発表していただき、適宜発表間に討論時間を設け、最後に総合討論の時間を設ける予定です。趣旨説明では根研究学会の開催する根研究集会の紹介、2024年6月にドイツで開催される第12回国際根研究会議の紹介など樹木根研究の国際および国内動向を森林学会員に広く情報提供します。またJournal of Forest Research誌におきまして、「Recent advances in the understanding of the development and functions of roots in forest ecosystems(森林生態系における樹木根の発達と機能の最近の理解の進展)」という特集号を組む運びとなり、その宣伝をさせていただきます。総合討論では、樹木根と境界領域分野との研究者間ネットワーク作りを促進するための討論も行います。