第136回日本森林学会大会 発表検索

講演詳細

遺伝・育種部門[Forest Genetics and Tree Breeding]

日付 2025年3月22日
開始時刻 16:00
会場名 N23
講演番号 F-17
発表題目 スギの雄性不稔(MS2)候補遺伝子の同定
Identifying a candidate gene for MALE STERILITY 2 (MS2) in Japanese cedar
所属 森林総合研究所
要旨本文  無花粉スギは、花粉を飛散しないため花粉症対策に有効である。無花粉スギでは花粉形成に関連する遺伝子(雄性不稔遺伝子)に異常があるため成熟した花粉を作ることができない。現在までに4つの雄性不稔遺伝子座が特定され、そのうちの2つの遺伝子(MS1およびMS4)は塩基配列の欠失および置換により機能を失ったと推定されている。本研究では、スギの参照ゲノム配列を活用することで、雄性不稔遺伝子MS2を同定した。122個体の戻し交配家系での連鎖解析の結果、MS2遺伝子座を1.7 cMの範囲に絞り込んだところ、chr5(第5染色体)の9.1 Mbpの範囲に存在する91個の遺伝子に絞り込まれた。原因遺伝子が雄花で発現する遺伝子で、有害な突然変異を持つと仮定しRNA-Seq法で探索した結果、MS2の無花粉スギ系統でアミノ酸置換によりタンパク質の正常な機能が阻害されると推定される1個の遺伝子を見出した。この遺伝子は相同性検索の結果、脂質代謝に関連する機能(エステラーゼ/リパーゼ)が推定された。またシロイヌナズナの相同遺伝子の変異体は雄性不稔を示すことから、MS2の原因遺伝子として可能性が高いと考えられた。
著者氏名 ○上野真義1 ・ 長谷川陽一1 ・ 伊原徳子1 ・ 鶴田燃海1 ・ 角井宏行2 ・ 岩井淳治3 ・ 平山聡子4 ・ 山口勝司5 ・ 重信秀治5 ・ 藤野健6 ・ 鈴木穣6 ・ 笠原雅弘6 ・ 森口喜成7
著者所属 1国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域 ・ 2東京大学大学院農学生命科学研究科 ・ 3新潟県森林研究所 ・ 4元新潟県森林研究所 ・ 5基礎生物学研究所 ・ 6東京大学大学院新領域創成科学研究科 ・ 7新潟大学農学部
キーワード スギ, 雄性不稔, 連鎖地図, 参照ゲノム配列, QTL-seq法
Key word Cryptomeria japonica, Male sterility, Linkage map, Reference genome sequence, QTL-seq