過去の会長あいさつ

2020~2021年度 丹下 健

2018~2019年度 黒田慶子

2016~2017年度 中村太士

2014~2015年度 大河内勇

2012~2013年度 井出雄二

2020〜2021年度

このたび日本森林学会会長に就任いたしました東京大学の丹下 健です。会長就任にあたりご挨拶させていただきます。学会運営との関りは32年前に大会論文集の編集主事を務めたのが最初で、その後JFR編集担当理事も務めさせていただきました。永田信会長時代に、学会の財務状況の改善方針の策定に関わらせていただきましたが、総務や財務などの学会運営に直接かかわった経験はありません。経験不足な点を学会役員や事務局の皆様に補っていただきながら学会運営を担っていきたいと思います。

今年に入ってからの新型コロナウィルス感染症の国内での感染拡大により、会員の皆様の生活や研究活動も大きな影響を受けられていることと思います。世界的な感染拡大によって、海外との人的交流や共同研究が困難な状態が続いており、ご苦労されている会員も多いことと思います。森林学会も、名古屋大学を会場とし開催予定であった学術大会も中止となりました。学術大会中止の事後処理やオンラインで会議形式での総会開催など、このような状況のなかでの学会運営を担っていただいた黒田慶子前会長を始め、学会役員・事務局の皆様のご尽力に心より感謝申し上げます。現在、全国的には感染者数の増加は低く抑えられ、緊急事態宣言も解除されていますが、経済活動の再開に伴って感染者数の増加が確認されている地域も生じています。ワクチンや治療薬が普及するまでは、コロナウィルスと共存した「with コロナ」の生活が続くとされています。私の任期の2年間は、「with コロナ」時代の学会活動のあり方を策定することが任務の一つとなります。

学術大会開催は、会員の研究発表の機会であるとともに、世代や専門分野、所属の異なる会員の交流の機会であり、学会にとって最も重要な事業です。高校生による研究発表も、森林科学の裾野を広げる大切な機会となっています。これまでは全国から会員が集まり、対面で開催されてきました。来春の学術大会も、感染状況によっては通常開催が難しくなることも想定され、オンライン開催に対応できる準備を進めていきます。どのような開催形態となっても、研究発表とともに会員交流の機能をいかに維持できるかが検討課題です。学術大会に関しては、その運営を担っていただいている開催地区の会員の負担の軽減も課題となっています。学会員は減少傾向が続いており、各地区の会員数も減少しています。学会では、開催校の会員を中心に組織される学術大会運営委員会とは別に、発表プログラム編成や学術講演集の刊行などの業務を分担するプログラム編成委員会を組織し、大会参加費も学会ウェブサイトから徴収できるようにするなど、開催校の負担の軽減を図ってきました。将来に向けた学会大会運営のあり方についてもさらに検討を進めていきます。

会員減少は、学会の財務状況の悪化を招いています。5月27日に開催された総会でも2019年度の収支が赤字であることが会計担当理事から報告されました。石塚和裕会長時代に、JFRと森林科学の冊子体の要否による会費区分を設けて収入増を図るとともに、支出項目の見直しによる支出削減を図る財務状況の改善が行われてから10年が経過しました。その間、JFRの出版社変更などの支出削減努力もなされてきました。すぐに学会運営が立ち行かなるという状況ではありませんが、活発な学会活動を維持しながら財務状況を改善するための検討を始めます。

異常気象が頻発するようになり、地球温暖化に伴う気候変動が、社会の持続可能性にとっての脅威となり、気候変動の緩和に寄与する森林への期待はますます高まっています。しかしながら世界の森林面積は熱帯林を中心に減少が続いています。森林生態系の健全性への気候変動の影響も指摘されています。国内でも主伐期を迎えた人工林が過半を占めるようになり、国産材供給量は近年増加傾向にありますが、幼齢期の人工林面積は増えず将来の人工林資源造成は進んでいません。森林に関わる課題は、森林の大切さを訴えるだけでは解決せず、森林保全と経済活動が両立できる社会システムが必要です。森林科学の特長は、自然科学だけではなく、人文科学や社会科学など広範な分野を含む総合科学という点です。そのような多様性を核としてさらに広範な専門分野の方々との協働を広げていくことが求められていると思います。そのような動きのきっかけを増やしていくことも学会の役割と思います。

先が見通せない状況ではありますが、研究成果の発信や情報交換などを通しての会員の皆様の研究活動の支援と社会貢献という学会の機能をさらに向上できるよう努力して参りたいと思います。皆様のご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。

(2020年6月)

日本森林学会会長 丹下 健

2018〜2019年度

このたび日本森林学会会長に就任いたしました神戸大学の黒田慶子です。会長就任にあたりご挨拶申し上げます。これまで森林学会では企画・広報を担当し、また2014年から4年間は副会長として学協会連携を担当してまいりました。北海道大学の中村前会長に引き続き、関東圏以外から選出いただきました。副会長や理事、主事、事務局の皆さまに助けていただきながら、森林学会の発展に努める所存です。

森林学会は林学会として設立され、2014年に100周年を迎えました。歴史の長い学会として様々な活動により発展し、現在に至ります。当学会で扱う研究は、連綿と続く育林技術に関するものに加えて、近年では環境保全や生物多様性に関する基礎研究へと範囲が広がり、研究者の研究動機や価値観が変化していることがわかります。しかしながらここには課題もあります。林業が不活発であるために、森林全体の保全・管理が実践しにくくなっていることです。原生林のように資源利用しないことが前提の場所は除外しますが、人工林以外の森林についても、「資源利用なしには森林の持続性担保は難しい」ことや、「自然に任せる」状態で発生している諸問題について、今一度意識する必要があると思います。森林管理の方向性について将来を見据えた議論と提案を続けて、具体的な科学情報を社会に提供することと、国や地方行政に人材を提供することは、森林学会の重要な役目と言えるでしょう。

これまでの学会での仕事を通じて、森林科学分野の研究発展のためには、学会としての明確な意思表示が必要と感じています。たとえば日本学術会議での説明や、科学研究費(日本学術振興会)に関する提案などです。今後の課題あるいはビジョンとしては以下の事柄を重視し、理事や会員の皆様と共に学会の運営方針を検討したいと思います。

(1)研究の新規性と発展。基礎研究から技術開発まで、高水準でバランスのとれた研究発展を目指すにはどうすれば良いでしょうか。学会での活発な議論が必要です。また当学会は、以前は地方行政や公立研究機関(都道府県の林業試験場)、国有林職員が実践的報告を行う場でもありました。最近では、論文の価値基準が純粋な基礎に傾いており、現場の情報を論文にしにくいという意見があります。農学分野に属する森林科学としては、真理探究と同時に実学であることを意識したいと思います。

(2)人材育成、就職への橋渡し。近年は研究者の減少が危惧されており、研究者への進路に関する情報提供が必要です。2年前の大会から大学院進学推進の企画を実施し、日本学術振興会特別研究員の申請のコツや、大学院進学者の進路の紹介などのセミナーを行っています。会員の要望が多様化していることもあり、若手〜中堅研究者に役立つ情報を提供したいと思います。学会誌編集担当による論文執筆講座も実施しています。

(3)社会への情報発信。「環境保全は大事」という認識が世の中に広く認知されつつありますが、森林に関しては種々の誤解があります。農学部の大学生でも森林に関する知識が少ないのは残念です。森林ボランティアが増えていることもあり、社会への情報発信はこれまで以上に重視すべきでしょう。学会時の公開講演会にとどまらず、いろいろな形での発信が必要と思われます。

さて今回は、林学会〜森林学会を通して初めての女性会長になります。「林業・林学は男の世界」と思われがちな分野で会長に選出いただいたのには、それなりの経緯があると思っています。当学会では男女共同参画の観点により、2005年の選挙以来、「多様な代議員(評議員)の選出促進のお願い」という一文を投票の際に提示してきました。「女性、40歳未満の若手、大学以外のさまざまな機関の会員の参画」を意識した投票のお願いで、これは高年齢層の首都圏在住の男性会員に偏った運営にしないためです。その結果、男女の中堅研究者が一定数選出されるようになり、代議員や理事の年齢構成が若くなりました。私自身は、女性であることを意識せずに仕事を続けてきましたが、誰かを選出する作業では、少数派を「無意識で除外」しやすいと実感しています。そのような場合、上記の文言を目にすると、女性や若手の顔も含めて思い浮かべて投票いただけるようです。当学会では100周年記念大会で「森林分野におけるダイバーシティ推進」を宣言しています。男女共同参画推進担当は今年度から「ダイバーシティ推進」と名称を変更しましたが、男女共同参画はダイバーシティ推進の根幹をなすことには変わりがありません。これまで以上に多様な会員が森林科学の研究や林業実務に参画できるようサポートしたいと思います。

日本森林学会では、言うまでもありませんが地球環境の保全に直結する研究を担っています。自然科学と社会科学の両方をつなぐ分野でもあります。このような研究分野の特性から、国の政策や行政判断に関わる情報を提供する立場にあることを意識し、新規性の高い研究を推進していきたいものです。その過程において、学会がどのように会員をサポートできるのか考えながら頑張っていきたいと思います。会員の皆様からの要望やご提案をお待ちしています。今後ともご支援いただけますよう、よろしくお願いいたします。簡単ですが会長就任の挨拶とさせていただきます。

(2018年6月)

日本森林学会会長 黒田慶子

2016〜2017年度

このたび日本森林学会会長に就任しました北海道大学の中村太士です。会長就任にあたり、ご挨拶させていただきます。

関東圏以外から会長が選出されることは私の記憶になく、まさに青天の霹靂でした。地理的にも離れている私がうまく会長職を遂行できるのかどうか不安ではありますが、副会長や理事、主事、事務局の皆さまに助けていただきながら、頑張っていきたいと思います。一方で、私が会長職を2年間無事に務めあげることができれば、今後も関東圏以外の会員から会長が選ばれることも多くなると思われ、その試金石となるように微力ながら森林学会の発展に努めてまいります。

これまで理事や副会長職を務めてきて、森林学会が非常に多くの活動を行っていることを知りました。またそれらの活動が、担当理事や主事、事務局の献身的な努力によって支えられていることもわかりました。井出会長、大河内会長の時代には、男女共同参画、林業遺産の選定、中等教育連携推進など、新たな活動が活発に展開されてきました。

私自身は、中等教育連携推進委員会の委員長を4年間務めさせていただき、現在の普通科、農林科高校の現状と課題を知り、高校の先生たちと話をする機会を得ました。高校の学習指導要領の改訂に伴い「生物の多様性と生態系」が指導の柱の一つに据えられ、現場においてどのように指導したらよいか、戸惑いが生じていることを知りました。また、大学側の事情として、出生率の低下にともない、大学そして森林科学を志す学生数も将来減ることが予想され、この機会に学会として高校、大学双方にとってメリットある活動を展開できないか模索しました。その一つが学会時の高校生ポスター発表であり、2014年学会設立100周年となった記念すべき埼玉県大宮大会で始まりました。翌年北海道大学で行われ、今年日本大学で行われた127回大会では、北海道から熊本まで38件の発表申請がありました。

このように活動範囲を広げてきた学会活動ですが、活動範囲の拡大はそろそろ限界に来ており、私自身は活動内容の充実と継続をいかに達成していくかが、会長としての2年間の重要な役割と思っています。一つ一つの活動を実のあるものにしていくためには、人と財源が必要になります。先の高校生ポスターでは、活動に賛同していただいた国土緑化推進機構の「緑と水の森林ファンド」助成を受けることができ、遠方から来られた生徒や引率の先生方に旅費の補助をすることができました。しかし、活動を支える主事の数も定款が定める最大数に達しており、身の丈に合った活動の継続を考えていかなければならないと思います。

日本森林学会で発表される研究内容も、私が学生として初めて参加した時代とは大きく変化しました。この間、いわゆる林業学としての林学から、生態学や野生動物管理学、環境学までも含む森林科学への発展は、時代の要請でもあり、いわば必然でした。一方で、高度経済成長期に植えられた一千万ヘクタールの全国人工林は伐期を迎え、これまでの林業学として培った施業技術を今こそ活用する段階にあります。しかし、日本の急激な人口減少、林業の採算性の悪化によって、竹が暴れるように侵入したり、下層植生が生育できない管理放棄された人工林が各地に見られ、木材生産のみならず森林のもつ公益的機能、生物多様性の維持に大きな支障をきたしているのも事実です。野生動物との軋轢も深刻で、里山や都市近郊林にシカをはじめとして多くの野生動物が現れ、森林のみならず人的被害も多数発生しています。森林が持つ生態系サービスをバランスよく発揮させるためには、どんな社会・経済システムが必要か、自然科学のみならず社会科学分野を包含する森林学会が主体的に関わりあうべき課題だと思います。

日本森林学会の活動として2016年大会で実施された企画「森林・林業分野職業研究会」は、新たな展開として注目されます。団塊の世代の退職が続く中、これまで採用人数を抑えてきた都道府県は、林業職も含めて多くの分野で大幅に求人数を増やしています。一方、大学博士課程に進む日本人学生数は減り続け、将来の森林科学を背負ってくれる日本人研究者の育成は大丈夫なのか、と危惧しています。それぞれの職種にどんな魅力があり、どんな仕事をしているのか、学生たちにとってはぜひとも知りたい情報であり、その橋渡しを森林学会が担うことができれば、研究交流の場としての魅力のみならず、将来就きたい職業の情報を得られる場として、若者も魅力を感じることができるのではないでしょうか。

森林学会の機関誌、日本森林学会誌、Journal of Forest Research、森林科学の役割と発展は、今後もますます重要になってくると思われます。予算節約のため冊子体としての配布をすべて電子化すべきではないか、「森林科学」の一般読者をどうやったら拡大できるか、JFRのインパクトファクターをあげるためにはどのような活動をすべきか、国際情報発信のための科研費予算をいかに獲得するかなど、難題は多いのですが、学会としての実力を示す重要な活動ですので、更なる発展ができるように議論してまいりたいと思います。こうした学会誌の発展と発表される研究成果の充実とは表裏一体の関係にあります。大会時に行われる各種学会賞の受賞者講演は、年々素晴らしい内容に深化しており、この講演を聴けることは私にとっても楽しみになってきました。

気候変動や人口減少、資源の持続的管理など、森林を取り巻く自然・社会情勢は今後もめまぐるしく変化し、日本森林学会の役割はますます重要になってくると確信しております。今活動している内容をさらに充実させ、多様な価値観を持った学会員が楽しんで研究発表や意見交換し、社会とのつながりを実感できるような日本森林学会をめざして、頑張りたいと思います。会員の皆さまにおかれまして、今後ともよろしくご支援のほどお願い申し上げ、簡単ですが会長就任の挨拶に代えさせて頂きます。

(2016年6月)

日本森林学会会長 中村太士

2014〜2015年度

この度会長に就任いたしました大河内勇です。これまで、森林学会では、日林誌編集委員、男女共同参画担当理事を、また、前井出会長のもとでは副会長として日本森林学会設立100周年記念事業を担当させていただきました。この度、会長を務めさせていただくにあたり、100年もの歴史があり、2300名もの会員のいる由緒正しい学会ということで、その責任の重さに身が引き締まる思いであるとともに、大変光栄なことと存じます。副会長・理事・主事とともに一丸となって、皆様のご期待に添えるよう、頑張ってまいりたいと思いますので、会員諸氏のご助力をいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

日本森林学会は、1914年(大正3年)に林学会として設立され、日本に近代的な林業を興す志を有する研究者や技術者の集団として活動を始めました。その後、1934年(昭和9年)には、日本林学会と改称し、戦中戦後の荒廃した山林の造林や防災などに貢献してきました。さらに、2005年(平成17年)には、木材生産だけでなく、森林の多面的機能への社会の関心を背景に日本森林学会と改称、水土保全、生物多様性、地球温暖化、社会的便益などの研究の比重を高めてまいりました。研究者の集まる任意団体として続いてきた日本森林学会は、2011年(平成23年)6月1日、宝月会長のもとで法人化を果たし、一般社団法人日本森林学会として新たに発足しました。また、2014年(平成26年)3月にはさいたま市で開催された第125回大会(東京大学担当)において、井出会長のもとで設立100周年を祝いました。今年は、100才になった日本森林学会の新たな一年になります。

森林の毎年の変化はゆっくりしたものですが、社会の変化は急速で、森林・林業を巡る情勢も変化しつつあります。

自由化された外材との競争で低迷していた国産材も、価格競争力を有するようになったことと、充実した森林資源が毎年伐採量をしのぐ蓄積を増加させていることから、林業が産業として自立しつつあります。このような時であるからこそ、産業としての自立を支える研究や、健全な産業となるために多面的機能を総合発揮する「持続可能な森林管理」に向けた研究が求められていると言えます。

しかし、そのような研究を支える森林学会の会員は徐々に減少しています。このことは、これまでの産業の縮小が、時間的な遅れをもって研究者の就職先の縮小に及んできていることを意味します。対象とする産業が縮小してしまえば、それを支える学会が栄えることはあり得ません。「林業滅びて林学栄える」ということはあり得ないのです。森林学会は産業としての林業を支え、林業セクターを拡大することを通じて、大学を卒業した学士の就職先を増やす努力が必要ですし、そのことが森林・林業の研究者である大学院卒の博士・修士の就職口を増やすことになるものと確信します。森林学会の発展のためには、この問題に取りかかりたいと考えています。また、産業への関与では先を進んでいる一般財団法人日本木材学会とも交流を深め、学んでまいりたいと考えます。

第125回大会では「森林分野におけるダイバーシティ推進宣言」が採択されました。言うまでもなく、男女共同参画は社会の規範です。森林の研究分野では、全体に女性が少ないのみならず、分野間の違いも大きいものがあります。様々な分野への女性の進出について、更に活動をしてまいります。また、大学や研究機関の国際化は今や大きなトレンドであり、日本の研究が国際競争力を有するためには欠かせません。学会としても、これまでJFRの国際化に取り組み成果を挙げてきましたが、それ以外についての国際化についても取り組んでまいります。

同大会では100周年記念事業の一環として、「林業遺産」の認定が始まりました。林業遺産は自然遺産ではなく、日本の人と森林、林業との関わりを証明する遺産を学会として認定しようというものです。本事業はまさに開始されたばかりであり、様々なジャンルにわたる林業遺産を毎年増やしていきます。その過程で、林業遺産というものを学会の会員の皆様も議論していただき、社会への認知度を高めていきたいと思います。

学会が法人化したことにより、支部会は地域の学会として独立し、日本森林学会とは連携学会の関係となりました。今後とも、友好的な連携関係を維持してまいりたいと思います。また、学会としての社会への発信が求められるようになります。これについては、新たに「社会連携委員会」を設け、対応していく所存です。

最後に第126回大会と、第127回大会についてです。第126回大会は北海道大学が担当として開催されます。大会に関しては、第125回大会で、プログラム編成委員会が新たに組織され、これまで開催大学にとって大きな負担となっていた作業を学会全体で支えることとなりました。また、高校生のポスター発表も新たに始まり、新鮮な風が吹き込まれました。こうした改革を続けて行きたいと思います。第127回大会は日本大学で開催されます。両大会とも、関係者の皆様には多大のご苦労をおかけすることになりますが、よろしくお願いしたいと思います。

(2014年6月)

大河内 勇

2012〜2013年度

この度会長に就任いたしました井出雄二です。これまで、森林学会では、日林誌編集委員、評議員などを、また、前宝月会長のもとでは副会長を務めさせていただきました。とはいうものの、学会の運営にそれほど深くかかわってきたとは決して申上げられません。そのような私が、日本森林学会(日本林学会)が設立100年を迎えようとする節目の時期に、会長を務めさせていただけることは、大変な名誉なことであると思う一方、きちんとしたかじ取りができるのだろうかと不安でもあります。是非、会員諸氏のご助力によって、任期を全うしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

最近の森林学会長の取り組みについて振り返ってみると、石塚前々会長は、それまで不安のあった財政の健全化と法人化を強力に進められ、それぞれ目標を達成されました。また、宝月前会長は、無事一般社団法人としての日本森林学会を発足させ、かつ、ホームページの充実やメールマガジンの創設といった会員相互のコミュニケーションを重視した運営を実現させました。こうした取り組みによって、本会の社会的な位置づけが明確になるとともに、会員の帰属意識もやや高まったと思われます。

しかし、学会に運営上の問題が全くなくなったかというと、そうとも言い切れない面が多くあります。

まず、財政ですが、表面的には健全化が達成されたとはいうものの、会員数の減少傾向が続いており、会費収入の落ち込みは顕著です。会員数の増加と収支の均衡が求められています。そのために、魅力ある事業を行い会員数の増加を図ることはもちろんですが、まず事業を精査し絞り込むことが必要と思われます。例えば、出版は森林学会の中心事業であることは間違いありませんが、そのために投入される経費や会員のエネルギーは少なくありません。現在、3誌を発行しておりますが、それぞれ重要な役割があるとはいうものの、費用と効果を検証して改善を図ってゆくことが重要と考えます。

さらに、法人化に際して旧支部にそれぞれ地域に根ざした学会としての独立をお願いしました。それらの地域森林学会と森林学会の関係は、現在のところは概ね従前の慣例に従って進められていますが、曖昧なままになっております。それぞれの学会の目標とするところを、森林学会としてよく理解したうえで、よりよい協力関係を構築してゆくことが求められます。そうした中で、森林学会が本来的になすべき事業も、明確になってくるものと考えます。

関連して、都道府県において森林・林業関連の試験研究機関の縮小や統合が進み、現場対応型の研究がなかなか進みにくい現実があるものと考えます。少ない研究員がたくさん課題を抱え、少額の研究費で頑張っておられます。地域森林学会との連携を考える中で、こうした問題に対しても、森林学会として何らかの支援ができるような仕組みができないかと思案しております。

次に、一般社団法人化した学会の役割についてです。これまでの任意団体では、会員が自発的に集まって、自らの意志で自らの利益ために会を運営するということが目標だったと言えます。しかし、法人化した学会は、会員の利益だけでなく、会の社会的責任を強く意識しなければならないと考えています。森林学会は、みなさん個人と同じように住民税を払っています。会として社会の一員となったからには、社会への貢献が求められるのは当然です。もちろん、これまでも社会貢献に類する活動は、会員の努力によって種々行われてきたと承知しますが、これからは、より積極的、組織的な活動が求められるでしょう。そうした活動を通じて、森林分野のプレゼンスが高まれば、会員の研究や業務に対する理解も進み、ひては本会の健全な運営にも寄与するものと考えます。

私としては、任期中に以上のような課題を中心に取り組み、少しでも前進できるよう努力してゆきたいと思っておりますので、会員の皆さんの、積極的なご意見ご提案を期待します。

それとは別に、創立100周年をどのように迎えるかも、今期の大きな課題です。

本学会は1914年(大正3年)に創立された、農学系では3番目に古い歴史を持つ学会です。森林と林業を網羅した研究と実践を支える組織として、1世紀もの長い間活動を続けてこられたのは、先人の献身的な努力による運営と会員の活発な活動によるものと思います。これまでの、森林学のあり方を振り返るとともに、これからの100年を展望する良い機会と考えます。幸い、関東森林学会のご協力のもと、東京大学を会場に125回大会を開催していただけることになりました。これから、その内容について検討し、本学会の歴史にふさわしい大会を実現することが求められていると、自覚しております。これに関しても、会員の皆さんの積極的なご支援をいただきたく、重ねてお願いいたします。

(2012年5月)

井出 雄二